2019年10月24日Googleが量子超越性を実現し、IBMが反論するというニュースがでています。
Googleが量子超越性を実現しましたと発表したのに、IBMが水をさしているかのように受け取っている人もいます。
この件に関して、わかりやすく理解できるように説明します。
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量子超越性とは?
量子超越性は、量子スプレマシーという表現を使うこともあります。
今の普通のコンピュータのことを、古典コンピュータと呼ぶことにします。
量子超越性は何がすごい?
量子コンピュータには以下の3種類あります。
-非万能量子コンピュータ
-非古典コンピュータ
万能コンピュータは何でもできるし古典コンピュータよりもはるかに高速計算できる量子コンピュータです。
非万能量子コンピュータは、全てではないけど一部の量子計算ができるので古典コンピュータより役立つコンピュータです。
非古典コンピュータというのは、量子状態を利用したコンピュータだけど古典コンピュータより劣るものです。
量子コンピュータの開発の第一段階は非古典コンピュータ、第二段階は非万能量子コンピュータ、第三段階は万能量子コンピュータです。
最終目標は万能量子コンピュータの完成ですが、現在は、非万能量子コンピュータが完成するかどうかが焦点となっています。
非万能量子コンピュータは、
ということなので、量子超越性を実現したというGoogleの発表は、
量子コンピューターの開発のステップが第二段階に進んだということを意味しています。
量子超越性が実現したということの意味は、量子性を計算に使うと古典コンピュータよりも速く計算できるということが証明されたということです。
言うは易し行うは難しなので、それでもすごいことではあるのですが、そんなことやる前からわかってるじゃんと考える人もいるでしょう。
もう一つ意味があります。
量子コンピュータができたといっても、量子計算が実際に行われているかどうか確認するのも難しいことです。
量子超越性が実現したということは、古典コンピュータでは実現不可能なことが起きたということでもあります。
つまり、実際に量子計算が行われてているということの確認効果もあります。
だから、すごいのです。
IBMの批判の理由は何?
IBMはGoogleが量子超越性を実現したという発表を否定しています。
理由は、現在、最速スーパーコンピュータ(古典コンピュータ)が1万年かかる計算を200秒で計算したとGoogleはいっているけど、実際には、スーパーコンピュータで2日半でできるじゃんということです。
スーパーコンピュータは、だいたい10年で1000倍スピードアップします。
2日半は約20万秒なので、10年後のスーパーコンピュータでもできるようなことだから量子超越性とはいえないとのことです。
他にもいろいろ細かい理由はあるそうですが、ちょっと苦しい批判のような気がします。
量子超越性に対する過度の期待に注意
IBMの指摘は、確かに一理あるものだとは考えられます。
現在、複数の量子ビットの操作は実現しています。
今回、Googleは53量子ビットを使って、量子超越性を実現しました。
今後、単純に量子ビットを増やしていけば計算能力がアップすることは間違いありません。
量子超越性を実現することにより、量子コンピュータ開発は次のステップに移ったとも捉えられますが、それが万能量子コンピュータの開発につながるかどうかは、まだわかりません。
現在の状況はあくまでも、一部の量子計算ができる非万能量子コンピュータが古典コンピュータよりも速く計算できたというだけの話です。
遅くても良いので、万能量子コンピュータを実現した後でも、量子超越性の実現を目指すのは遅くないでしょう。